監理団体が新規の営業開拓が難しい理由
ブローカーや派遣機関からの紹介ではなく、協同組合が自力で営業して受入企業を探す。これって…
かなりハードルが高いです!
私自身数年前までは新規企業開拓部隊として、ダイレクトメールを作成して大量発送、レスポンスがあった企業(電話)へは、電話口で「別に来なくていいよ、電話で済むから」と断られてもほぼ無理やり訪問。その他、飛び込み、テレアポなどをしながら営業していました。営業は2年やりました。自分が契約を結べた企業は5社でした。営業部隊は私を含めて3名で、部隊全員の成果は11社でした。
当時契約した企業で未だに付き合いのある企業は9社です。
交通費や広告費はかなり使ったはずですが、それに見合った利益はなんとか上げられています。
「労働力確保!コストが安い!」なんて言っちゃいけない!
なぜこの事業において、新規受入企業の営業開拓が難しいかというと、法的(と言っても過言ではない)なしばりがあるからです。
実利を目的た受け入れの斡旋は基本的にOUTです。実習生を受け入れてガッポガッポでウハウハは入管は許さないんですよね。だから、表向きは受入企業から頂いた監理費は、人件費及び必要経費で相殺されなければならないんです。
- 実習生は素晴らしい労働力ですよ!
- パートさんやアルバイトの穴を埋めてくれますよ!
- 人件費が安いですよ!
なんて文言は絶対にうたってはいけません。組合のホームページにしろ、ダイレクトメールにしろこのような文言は完璧にアウトです。組合員の会員募集という形で新規企業を開拓していくものの、営業しにくいです。
コンプライアンス重視!受入の説明だけでやる気を無くす見込み客たち
コンプライアンス重視ですから、実習生事業の建前を説明するだけでも疲れる。
受け入れにかかる月数、現地での面接、派遣国の実習生の特徴、手続き、労務管理、実習生の宿舎(民間アパート可)。労基法違反に対する処分も日本人従業員と比べて、実習生に対する処分の方が厳しいものがあります。
- 実習生の36協定違反。
- 些細な計算ミスによる賃金未払い。
- 受入れ職種以外の作業をさせる。
などなど実習生と実習生受入企業を縛る決まり事はたくさんあります。
上記を違反した場合、甚だしき時は即受入れ停止。在籍中の実習生の強制帰国となります。また、そうでない場合も注意、指導等を受け続けると受入れ停止となります。
注意程度なら大丈夫と思ったら大間違いです。
実習生の在留期間が、期間更新や資格変更時に短縮されることがあります。通常問題のない監理団体では1年です。
日常的な書類作業も受入決断のネックに…
また、受け入れてからの日常的な書類作業も面倒に映ります。
- 実習記録をつける。
- 雇用条件の整理・確認。
- 給与計算方法。
- 昨年が赤字決算の場合、今年の黒字見込みを作成。
- 技能検定試験の試験対策
- 資格変更、期間更新などの諸手続き。
- その他、実習生のトラブルについて…。
予め説明するともう聞き手はお腹いっぱいです。
DQN企業や建築関係の企業ですと、書類手続きからトラブル対応までおんぶに抱っこでやれと言ってきますから…。昔はやっていましたけど、DQN企業や建築零細企業での実習生の失踪率が半端無いのでやっていませんし、もう絶対にやりません。実習生を受け入れる前に一通りの説明をしていると、ものぐさな担当者、零細企業の社長だと手続きが面倒くさい、管理が面倒と言って受入れをすぐに諦めてしまいます。ブラックに近いグレーな受入企業にJITCO巡回が来た時の話
コストダウンも非常に難しい!
社長の性格、会社の社風等により差がありますが、従業員規模100人規模の企業ですと面倒くさいからとか、ルールが複雑すぎて守るのもしんどいなどというところは無いですね。
会社が技能実習生を受け入れるという方針を下したら、総務部長以下が手をつくして受入れを開始する。これが通常の企業だと思います。ここまで決心してくださったら…企業によってはコスト、もしくは監理団体の信用(監理手法、不正行為の有無、トラブル発生時の対応等)によってどの監理団体及び派遣機関と契約するかを決めます。
ここからコストの話になってきます。
- とにかく安く。
- 現在使っている組合よりももっと安くしてほしい。
こんな企業に限って求める実習生像が理想的過ぎなんですよねwもう笑っちゃうくらいです。品行方正、日本語ペラペラ、日本生活にすぐに順応できる、従順な人間。
コストをやたらと絞ってくるのは食品関係に多いですね。薄利で零細企業の多い水産加工はさておき、弁当、惣菜、パンを扱っている企業に関しては監理費、諸費用をひたすら値切ってきますね。食材も1円でも安く、国産の物ではなく海外の食材でもいいから安く済ませる。おにぎりなんて1個作って利益が5円未満ですからね。コストに厳しくなるのは仕方のないことなのかもしれません。
そのため、パートや従業員の賃金も低いです。人材が定着しない。実習生を入れざるを得ない。だけど費用は掛けたくない。
実習生事業において一人あたりの粗利が低いのが…監理団体です。
派遣機関よりも儲けていませんから。毎月の巡回、トラブル対応、配属、帰国時の移動費用…。本当に利益って少ないんですよ。
監理費を安くさせられたらこちらもモチベーションが上がりませんし、引き受けないことが多いです。やってられませんから。費用は削ってやることはやれと言われてもねえ…。
「どこの業界も同じだ!俺だってかつかつなんだ!」
という方もいらっしゃると思いますが…実習生事業においては特殊です。
更に立ちはだかる壁…受入職種
ここまで、実習生の事はよくわかった!コストも納得!書類手続きも厭いません!
となったら、職種の確認です。 やる気は十分なのに企業さんで行っている作業が、実習生の受入職種に合致しない場合…お断りさせて頂いております。お断りというか、そもそものが受入不可なんです。
実習生、研修生制度の黎明期の時は職種を偽って申請、3年実習させているところもありましたし、うちの組合も悪さはしていたそうです^^;
また、受入職種にわずかながらも合致した場合(機材、機械も揃っている。ですが、工場全体的にみて小規模な作業であり、指導員となれる人が一人しかいない場合等)、針小棒大にして入管に報告したこともありました。それも…今ではやっていません。
まとめ
監理団体の営業って難しいんです。
「実習生受入れることで労働力を確保」「派遣よりも安いよ!」などを広告や営業で謳えない。
- 法律、ルールが多く、受入経験のない企業は聞く耳を持たない。
- 受入のため、継続のための書類面での手間が掛かる(本当は書類の8割以上は監理団体が作成するのですが、初めて聞く人には膨大な量に聞こえる)
- 月1回の定期巡回、3月に1回の監査を含めるとそう簡単にコストダウンできない。
- 受入職種が限定されていること。
安かろうで監理団体を選ぶのだけは絶対にやめましょうね!後で泣きますから。