外国人技能実習生がトラブルを起こした場合、最終的に解決するのは我々監理団体、派遣機関であります。企業の方もサポートしてくれることもありますが、やはり、企業の方に迷惑をかけられない。そもそも、プライベート空間で起こったことなので企業さんも介入しにくいというケースもあります。
私が直面したトラブルはいくつもあり、解決できずに消化不良のまま終わってしまった案件もありますが、案件の殆どは無事解決出来ております。また、自分の経験だけでなく、同じ組合の先輩や他組合の先達からの実体験を参考にトラブル解決にあたるようにしています。今回はケース別に対処法を書いていきます。
体調不良(精神的、肉体的)で参っている実習生が帰国を訴えているケース
この実習生Aさんは現場での評価が高かったのですが、ある日会社を休むようになり、頭がいたい、お腹が痛いと訴え始めました。しかし、本人は3年まっとうして帰国したい。お金を稼いで帰国するんだと言っておりました。企業はこれ以上休むようであれば、辞めてもらうしか無いとのこと。
企業に対しては少し猶予を与えるようお話をし、実習生には企業の意見を伝えました。
「このままでは残留は難しいよ。でも、体が第一だから一緒に病院へ行こう。通訳もしてあげるから」
町医者を受診し異常なし。処方箋を飲みきったけれど、体調は一向に良くならない。という訳で、私が大病院へ連れていきました。結果はもちろん異常なし。それでも、容態は変わりません。監理団体としてもやれる限りのことはやりました。
病院引率の折々に「治らなければ帰国してもらうことになる」と伝えましたし、派遣機関に相談して彼の両親と話をさせました。彼は別にいじめにもあっていないし、仕事がきついとは思えない。夜勤でもないし、過度な残業もない。日本の生活に不満があるわけではない。でも、体調だけは悪い。
親身になって対応したおかげか、こちらの言うことをきちんと聞いてくれ、すんなり帰国させることができました。
ポイント
- 相手の要望を聞いてあげる
- 病院での受診等出来る限りのことをしてあげる
- やれるだけやって上げたのだから、帰国は仕方のないことだと思わせるようにする。
実習意欲の喪失。帰国したがる実習生を引き止める場合
すでにやる気がなくなっている状態です。引き止めて仕事をさせても、効率は悪いし、無理やり引き止めた結果、現場でわざとミスをしたり、会社に損害を与え、解雇されるよう工作する実習生もいます。
会社の気持ちはわかりますが、引き止めさせて無理やり仕事をさせるのはリスクが高いです。日本人従業員の場合、すんなり辞めさせてくれるのですが、相手が技能実習生だと無理に引き止めるよう監理団体に要請する企業が多いです。
もちろん、彼らが派遣機関に保証金を預けていたり、親御さんがせっかく送ってくれた機会を棒にするのは良くないと親身になっている企業さんだってあります。
監理団体としては当然居残るように説得します。企業からの要請ですから断るわけにもいきません。企業だって無駄かもしれないと思っています。でも、結果的に帰国することになってもやるだけの事をしないと我々も企業も納得しません。
説得方法(月並み)
- 中途帰国すると保証金や保証人の問題が発生し、家族に迷惑がかかる
- 家族の期待を背負って日本に来ていること
- 実習生の資格で日本に来れるのは一生に一度だけである
- 途中で投げ出したら生涯ずっと後悔し続けるだろう
- やり抜けば人間的に成長できる
と同時に、派遣機関や実習生の両親から説得させます。
それでも、帰国したいと言ってくるでしょう。その場合、期限をもうけてみることです。例えば、
「誰でも帰国したいと思うことはある。でも、あと◯ヶ月だけ実習してみないか?もし◯ヶ月経って、それでも帰国したい場合、また相談に乗ってあげるから」
期限付きで実習を継続するよう折衷案を出すと乗ってくれることがあります。しかし、それには長時間熱意を持って説得をすることです。実習生も根気が尽きてきたときに折衷案を出すのです。
プライベート、現場での規律違反等による被解雇者への対応
ケンカ、現場でミスを連発し成長の見込み無し、やる気のない実習生、または移行試験に不合格で帰国せざる負えない実習生を帰国させる場合です。
自分たちが悪いと認識しない中国人技能実習生は特に厄介です。3年間稼ぎたいし、母国に帰れば家族からも冷たい目で見られ、保証人が訴えられたりと踏んだり蹴ったりです。だから、何としてでも残りたい。
現場での評価が低くても、本人たちは一切納得しません。自分はよくやっている。会社の評価が間違っていると抵抗されます。途中帰国させる当日の説得も大切ですが、もっと大切なのは、それまでの指導です。
- 現場でミスをしたその時に厳しく指導する。
- 指導内容、指導回数を本人に伝える。
- このまま改善できなければ解雇となると伝える。
何度か注意し、記録を残しておく。これを材料に帰国当日説得を始めなければなりません。記録を取っていない、その場その場でミスを指摘されておらず、いきなり帰国だと言われたら激しく抵抗するに決まっています。
帰国時の説得
- 可能であれば派遣機関の駐在員に同行してもらう
- 保険金等ある場合、きちんと返金すると派遣機関に伝えてもらう
- 会社にはいられない。寮にも住めない
- 両親からの説得
中途帰国させる場合は、我々監理団体よりも派遣機関に、彼らをコントロールできる力があります。
移行試験に不合格した者も同様に厄介でした。本人は絶対に帰国しないと言い張りましたが、上記の手法で帰国させました。
それでも帰国しないと抵抗を続ける場合は…。
ある程度お金を握らせるしかありません。「こちらの気持ちだから」と言って10万円ほど握らせて帰ってもらいます。でも、このお金はもちろん回収しますけどね。
喧嘩の処理などもあるのですが、長くなったので次回で!