技能実習生が引き起こすトラブル…受入企業さんにとっても監理団体にとっても嫌ですよね。
多くのトラブルは実習生募集時、採用時、入国前の指導によって防止することが可能です。私が勤める団体の職員でも「そんなことくらい入国前に約束しておけば問題にならんだろうよ~!」と言いたくなるようなトラブルを引き起こしています。
多くのトラブルの原因は労働条件が元となっています。
基本的に賃金が良い、残業時間が長い、夜勤がある。日本人スタッフが人道的(鳶とか建築系は気が荒い人間もいて、時々暴力を振るう人権侵害が少なくないので要注意)であれば、トラブルは起きにくくなります。
どのような約束事をしておけばトラブル、実習生からの言いがかりを未然に防げるのか?
- 自分が勤める会社の賃金と他社を比べて不平を言う
- 残業、夜勤についての不満
- 技能移行試験を受験(実技、筆記試験)せねば2号へ移行できないなんて初耳!
- アルバイトや内職
- 日本語を習得しようとしない
- 実習生同士、配属先の社員との喧嘩
- 万引き等の犯罪。捨ててある家電製品を拾ってくる
- 身勝手な外出、外泊
- 金銭の貸し借り、実習生同士の賭博等の金銭トラブル
- 交通事故
- 宿舎の使い方(大声、調理の際大きな音をたてる)が悪い
- 持病を抱えていた
- 失踪
などなど…。
ざっと上げるとこのくらいでしょうか。ざっとなので、一つ一つの案件を細分化するとかなり多くなっちゃいます。
上記の事柄を3年間の実習生活で引き起こさないよう、書面にサインさせ、また口頭でも口が酸っぱくなるまで説明してあげましょう。実習生活の実態を理解すべきなのは、監理団体、企業だけでなく本人たちなんです。外国人単純技能労働者の受け入れと実態―技能実習生を中心に
1.賃金への不満
受入企業さんでいくらの給与が貰えるかは、面接時、いや、派遣機関が募集をかけるときに知らされているはずです。他社の賃金を知るのは、日本に入国後1ヶ月間の講習を行う時です。他社の実習生の賃金を知ると「うちの会社の賃金が低い」と不平をこぼす輩。
2.残業時間、夜勤への不満
残業や夜勤をすれば、割増賃金となるので収入が増えます。
同期の実習生がずっと夜勤をしているのに、自分はずっと昼勤。もしくは、自分だけ残業時間が少ないなど。こういった不満も良く聞かれます。
1.2.については入国前(採用時)にきちんと伝えておきましょう。
残業、夜勤は会社の経営状態による。
あなた個人の能力にもよる。日本語が下手、仕事ができないのであれば当然残業も夜勤も任せられない。
残業、夜勤は会社がすべて指示をする。残業したいからといって勝手に残業したり、休日出勤をしないこと。
とにかく、残業、夜勤は会社が決めることであり、実習生に決定権はない。夜勤、残業については不平をこぼさないよう採用時に何度も言い聞かせています。
それでも、配属されればこの手の不平を言う人はたくさんいます。しかし、事前に書面と口頭で説明してあるので、「あの時にも説明しただろう。会社が決めることだ」と言えばピタリと収まります。少なくともネチネチと言ってくる人はほとんどいません。いたとしたら相当性格の悪いやつです^^;
3.技能移行試験について
実習生1号から2号へと上がる際には、技能移行試験を通過しなければなりません。試験に落ちた場合、再試験がありますが、それをパスできなければ移行不可となり日本に滞在できなくなります。つまり帰国。予め採用時に伝えておきましょう。
しかし、通過したからといって、残りの2年間安泰というわけではないことも同時に説明しておきます。
- 日本語能力が低い
- 勤務態度が悪い
- 仕事ができない
- 素行不良
上記のような問題点があった場合は中途帰国させることを伝え、たとえ通過したとしても継続して実習、日本語学習に励み続けることを約束させます。
4.アルバイトや内職は不可
入管に届け出た実習実施場所以外での仕事、アルバイトなど技能実習以外の収入や報酬を伴う活動は絶対にしてはならないことを伝えます。もし、発見した場合は即日帰国させる旨も伝えましょう。アルバイトは絶対に認められません!農家のお手伝い、内職、インターネットを使用したオークションなど。
もし、入国後このような行為に手を染めた場合、予め監理団体もしくは企業から書面で指導してあれば、帰国させる際の説得もしやすいです。「ルールを破ったら帰国」「アルバイトをしたら帰国」と採用時に伝えておきましょう。
5.日本語の習得をしない
面接時、採用後の説明会では「はい、頑張ります!」「日本語検定○級を絶対に取ります!」「絶対にマスターします!」と大きな声で言いますが、配属後一生懸命日本語を学習する人はごく僅かです。中国人実習生は漢字というアドバンテージがあるにも関わらず、習得がそれほど速くありません。3.の技能移行試験に合わせて、日本語の必要性をこんこんと説いて下さい。また、配属後の指導方法についてはこちらを参照ください。
6.喧嘩
実習生の喧嘩については過去記事で上げたとおりです。
中国人技能実習生同士が喧嘩っ!仲裁に入るっ!
喧嘩はしてはいけないことは彼らとて言われなくてもわかっているのですが、やはりカッとなると手のつけられないのが中国人実習生です。喧嘩をした後のデメリットをきちんと伝えておきましょう。
- 怪我した場合は100%自己負担。社保の適用不可。
- 殴り合いの喧嘩をしたら帰国。
- 喧嘩の際に破損した物品はすべて弁償してもらう。
- 警察に勾留される。
7.万引き等の犯罪。捨ててある物を拾ってくる。
犯罪とわかって手を染める人は、精神的にどこがやられていると思います。
実習生で万引きをする人は極めてまれですが、過去、一人いましたね。その会社は残業も多く、最低賃金よりも100円高い時給でしたし、実習生もみんな満足しておりました。しかし、スーパーの惣菜コーナーで定期的に万引きを働いていた実習生がいました。
防犯カメラに映っていたため御用。警察にも通報し、然るべき処分を受けてから帰国させました。
これらの実例を、採用時にきちんと実習生たちに説明しておきましょう。
一昔前までの中国人実習生はゴミ捨て場に捨ててある「家電製品」を持ち帰ったりしていたようですが、近年は派遣機関での教育もあってかほとんど聞かなくなりました。それでも、監理団体としてゴミを拾ってくる行為はNGだと伝えておきましょう。
8.身勝手な外出、外泊
私は実習生たちが社会勉強のために、旅行するのは大賛成です。なるべく視野を広めてもらいたいと思っているので、企業さんの許可さえ貰えれば旅行にいくよう勧めることもあります。
しかし、必ずやっておきたいのが外泊、外出届の徹底です。少なくとも、起業担当者もしくは監理団体の職員に電話でいいので一報入れるよう指導しましょう。
私の管理している実習生たちはツアー旅行を自分で申し込んだり、京都、日光、大阪、富士山、ディズニーランド、北海道、沖縄に自力で旅行へ行っています。もちろん、予め許可をもらってからです。
外泊してトラブルが起これば、責任は監理団体と企業にあります。特に監理団体については「身元保証人(在留資格申請時に入管へ提出する)」であるので責任重大です。彼らの旅行日程、連絡先を把握しておきましょう。
採用時の彼らにとっては先の話であるかもしれませんがルールの一環として説明しておきます。
9.金銭の貸し借り、賭博
金銭の貸し借りで素直に返済すれば良いのですが、事情があって返済が滞ったり、賭博で負けて悔しいので支払わないなど様々な問題が起こる場合もあります。
「金銭の貸し借りは友情を壊す」
金銭の貸し借りは絶対にしないようきつく言いつけましょう。
こちらを参照:中国人技能実習生同士が賭け事で喧嘩
10.交通事故
JITCO白書だったかな…。それとも説明会の資料で見ましたが、実習生が遭った交通事故で最も多い事故は自転車です。私の経験上、思った以上に実習生たちは交通ルールを守ってくれるのですが、やはり事故は起こります。
自動車の運転手の過失と思われるものが多いですが、実習生の不注意によるものもあります。
- 自転車の右側走行(逆走)
- 二人乗り
- 曲がり角で立ち止まらずに突っ切る
- 歩道を走行して衝突
特に自転車の左側走行は大事です。ちょっと逆走しただけでも罰金、禁錮刑ですから法律は厳しくなりました。派遣機関、日本国内の講習機関でも学びますが、監理団体からも事故の事例を上げて説明しておきましょう。
11.宿舎の使い方
詳細についてはこちらの記事を⇒警戒信号!実習生の部屋が荒れている!それは喧嘩への序章…部屋の乱れは心の乱れ!
まず気をつけたいことは騒音です。
中国人の声は日本人のそれと比べて大きいし、よく通ります。また、日本のアパート、マンションの壁は薄いため、ちょっと大きめな声で話すだけで隣に聞こえてしまいます。
そのため、下記事項をしないよう注意しましょう。
- 夜、夜中、早朝に大声で話さないこと。
- 大きな足音を立てずに歩くこと。
- 調理の際は包丁をたたきつけない。中国人は中華包丁でドカドカと骨のついた食材をぶった切るのし、野菜を刻むにも大きな音を立てます。これを夜にやられると近隣住民はたまりません。
- 夜中に掃除や洗濯をしない。これも音が響きます。
部屋の中の備品の多くは受入企業が用意したものです。他人の物を雑に扱う傾向があるので、壊れるのも早いです。破損させたら自分で弁償する。または買い換えなければならないことを伝え、他人が準備したものだからと言って手荒に扱わないこと。他人が準備してくれたものだからこそ丁寧に扱うことを伝えます。
12.致命的な持病を抱えていた
最近ではほとんどなくなりました。
採用後、入国前に健康診断を中国で行いますが、選抜時は健康診断を行っていません。そのため、自己申告制になりますが「健康調査票」を候補者たちに書かせています。
「実習生として入国後、虚偽の内容があった場合、即帰国してもらう」
と断りを入れています。
実習をするにあたり致命的な病気を抱えていた場合は採用はできません。
13.失踪
失踪についても過去記事で書きました。
こればかりはある意味防ぎようが無いです。
- しかし、失踪しても明るい未来はない。
- 結局不法滞在者となるので、足元を見られて賃金を値切られる。
- 不安な日々を送るハメになる。
- 重大犯罪であること。
- 肉体的、精神的、金銭的に大ダメージをうけること
予めきっちりと伝えておきましょう。
外国人技能実習生の失踪は突然にっ!予兆なんてあるのかよっ!?
手を抜かずに噛み砕いて指導することが肝要
上記の内容は採用時に伝えておきましょう。
決してこれらの注意事項を派遣機関に丸投げしないように!派遣機関が言うのと我々監理団体の職員(出来れば日本人)の口から言うのとでは、言葉の重みが違います。私は中国語がある程度できますが、通訳を立てて2時間近くかけて説明しています。
トラブルを未然に防ぐためには予め説明して芽を摘んでおくことです。
上記を誓約書の中に盛り込み、守らせるために署名させます。この説明は本当に疲れますが、突発的なトラブルはぐんと減りますし、例え、配属後に不満を言い立てても「採用した時に説明しただろ」と一言言えるのは強みです。
配属後の彼らをコントロールするためには予め取り決めておいた誓約書が軸となります。
予め軸を設定しておくことで、指導がしやすくなります。軸がないと指導するさい根拠に乏しく、「こんなことは聞いていない。知らなかった」と反論されることになり、時間と労力が費やされます。
実習生を管理していると対処療法に頼ることが多い案件ばかりですが、予防策として事前にやってはいけないこと、やるべきこと、やって良いことを設定しておきましょう。3年間監理して行く中で大きな助けとなります。