技能実習適正化支援センターさんの今後の技能実習制度に関するご見解

技能実習適正化支援センター様のニュースレター5月号です。

今回の内容も非常に濃い!いつもありがとうございます!

技能実習制度の廃止論、人権問題など、業界の方々が常に心配している問題について切り込んでいます。

技能実習適正化支援センター様のHPはこちらです。
ぜひご覧ください。リンク元:http://www.titsc.org/

下記、転載となります。

1.技能実習制度は廃止されるのか?

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(座長:田中JICA理事長)は、4月28日に中間報告書を公表し、5月11日に同報告書が田中座長より斎藤法務大臣に提出されました(出入国在留管理庁のHP参照 https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03)。
技能実習制度の廃止も視野に入れての報告書であり、各紙も大きく報じています。
前職でこの技能実習制度の原点ともいうべき「人づくり」に関わった者の一人として、技能実習制度が歴史的岐路に立っていることを実感しております。
政府の「有識者会議」の類の中には、報告書が提出されたころには世の中の関心も薄れその存在すら忘れ去られるものも多い中、本件は中間報告書発表による世論喚起を促すなど「本気度」を見ることができます。
最終報告書が出されるのは今年の秋ごろとされており具体的な制度設計も提示されていない段階でコメントすることは控えたいと思いますが、他方、最終報告書を受けて2024年の通常国会にも技能実習制度の廃止などの関連法案が提出されるとの報道も見られます。差し迫った状況にあるとも言えましょう。
差し当たって、今回は本件の背景等についての私なりの評価と今後の注目すべきことについて述べてみたいと思います。

2.「国際貢献」という目的と実態との間に大きな乖離があるのか?

技能実習制度は、1954年に始まったJICAの外国人研修生の受け入れを原点としたもので、「技能の修得による人材育成」(人づくり)⇒「技能に練熟した実習生が本国に戻り技能移転」というプロセスによって技能実習生の出身国の国造りに間接的に寄与するものです。
「技能実習法」も第一条で人材育成を通じた技能等の移転による国際協力の推進を目的とするとしています。従って、問われるべきは、この目的がどの程度達成されているかであって、目的と実態の乖離ではありません。
実態として労働力確保という側面があったとしても、結果的に技能移転が推進されれば目的は達成されたことになります。
また、「国際貢献」という大上段に構えたような美称は実態との落差を浮き彫りにさせ、その分、技能実習制度が「悪者」にされるきらいがあるのではないでしょうか。
「技能実習法」も目的を「国際協力の推進」としており「国際貢献」という文言は使用されていないと理解しています。
技能実習制度は「技能実習法」を始めとする法制度に基づき政府の規制などの関与の下に実施されておりますが、「国際貢献」について議論するにあたっては、実施機関としての主役は民間企業等であり技能実習生への給与の給付も民間企業等に負っていることは忘れてはならないと思います。
現行の制度の下で「国際協力の推進」という目的を維持することは難しく、同目的をよりよく追求するための制度設計はあきらめ、技能実習制度の看板は下ろそうというのが有識者の意見のようです。


3.人権侵害の温床なのか?

技能実習の現場で発生する問題の中には人権が関わる問題も多くあります。
国連の自由権規約委員会は2014年の総括所見の中で技能実習制度を取り上げ強制労働にあたりうる労働条件についての報告があるとしている他、米国国務省の人身取引に関する報告書は日本につき技能実習制度における人権侵害の例を指摘しています。
本来、「国際貢献」という目的とそれを達成する過程で発生している人権侵害は別次元の問題であると考えますが両者をことさら結び付け対比するような議論が散見されるのは事実です。勿論、実習生の失踪など技能実習制度による制約(転籍禁止)に起因する特有の問題はありますが、人権侵害が発生するのは技能実習の現場だけではありません。
人権意識の高揚は国際的潮流でもあり、2011年に国連人権理事会で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択され、それを受け、2022年3月に経済産業省は「サプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を取りまとめています。
人権侵害の温床とのイメージの払拭に腐心してきている政府は技能実習制度が人権侵害の温床となっているとのイメージの払拭に腐心しているようですが、
「国際貢献」はその言葉の響きが美しいだけにどうしても
「単なる偽善である」
「実態は人権侵害ではないか」
との反発、非難を招きやすく「国際貢献」を前面に出すことは得策でないとの認識が有識者の中にあるのかも知れません。

4.何が変わるのか?

具体的な制度設計はこれから検討されることになりますが、提言の骨格として特定技能制度との一体化、特定技能との有機的連携・組み合わせ、技能実習制度の発展的解体による特定技能制度への「吸収合併」が志向されていることが注目されます。
技能実習制度は廃止して人材確保と人材育成(未熟練労働者を一定の専門性や技能を有するレベルまで育成する)を目的とすると明記されています。
技能習得が技能移転のためのものから外国人本人のキャリアアップと雇用する企業のための人材育成と位置付けられるようですが、人材育成という目的は技能実習制度が廃止されても残ることになると思われます。
また、監理団体や登録支援機関が担っている機能の重要性が強調されておりますが、これは、新制度の下において受け皿となる組織、枠組み、骨格の大幅な変更は想定されていない証左であるとも言えます。
もう一つ注目すべきは目的として人材確保が挙げられていることです。
「技能実習法」は技能実習を労働力の需給の調整の手段として行われてはならないとしていますが、労働力不足という現実を前に、人材確保を目的とせざるを得なかったということでしょう。
転籍の在り方、日本語能力の問題など難しい問題があります。

【発行元】

技能実習適正化支援センター http://www.titsc.org/
(Technical Intern Training Support Center)

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