実習生の妊娠、日本の人口減少問題についての考察 技能実習適正化支援センター様から抜粋

技能実習適正化支援センター様のニュースレターです。

今回の内容も非常に濃い!いつもありがとうございます!

実習生の妊娠、出産問題。
技能実習生の問題だけにとどまらず、人口減少問題にも触れていて、非常に興味深い内容となっております。

技能実習適正化支援センター様のHPはこちらです。
ぜひご覧ください。リンク元:http://www.titsc.org/

下記、転載となります。


1.ベトナム人元技能実習生に逆転無罪判決 死産児遺棄の罪 最高裁判決の影響は?

筆者(社会保険労務士)は、この事件の背景に注目しました。
判決の翌日に数々のメディアからこのニュースが報道されましたが、NHKニュースの報道に賛同する部分が多かったため、NHKニュースの一部を抜粋して関係者の主張、意見等を紹介します;
去る3月24日、3年前、熊本県芦北町で死産した双子の赤ちゃんを自宅に遺棄したとして、死体遺棄の罪に問われたベトナム人の元技能実習生の裁判で、最高裁判所は執行猶予のついた有罪とした1審と2審の判決を取り消し、逆転で無罪を言い渡しました。
起訴された死体遺棄に関する判決文については本稿では割愛します。
被告元実習生はこの判決後の報道陣へのインタビューで、「きょうの無罪判決で、妊娠して悩んでいる実習生が相談でき、安心して出産できる社会に日本が変わってほしい」と訴えました。
妊娠・出産をめぐるトラブルも各地で起きていて、出入国在留管理庁(以後、「入管」と称します。)が、昨年、ベトナムやフィリピンなど7か国の女性の実習生を対象に初めて実態調査を行ったところ、回答した650人のうち、母国の送り出し機関や受け入れを担う日本の監理団体、それに実習先の企業などから「妊娠したら仕事を辞めてもらう」など不適正な発言を受けた経験があると答えた人は、およそ4人に1人に当たる26%。

また、実習生の受け入れを担う監理団体や実習先の企業などから妊娠や出産を理由とした解雇などの不利益な扱いが禁止されていることを説明を受けて知っていると回答した人は59%とのこと。
国は監理団体や企業に対し、妊娠や出産に関する支援策を実習生に説明することなどを通知している(注1)が、監理団体からは「実習生を受け入れるような企業は慢性的な人手不足で、ただでさえ余裕がなく、実習生の妊娠出産のことまで考えられない」という声もあるのが実情です。
NHKの取材に応じた熊本県の監理団体の関係者は次の発言をしています。
「実習生の多くが稼ぐために来日し、企業側も人手不足を補う上で実習生を都合のよい存在として受け入れている実態は否めない。

一方で、実習生のなかには、若い世代を中心に、韓国などより賃金の高い国を希望する人も増えていて、厳しい労働環境で慢性的に人手不足とされている農業などの仕事を希望する実習生は、減ってきている。
実習生の受け入れ先の多くは慢性的な人手不足で、実習生の妊娠や出産のことまで考えられず、産前産後休暇などの制度についても理解が及んでいないのが現状だ。
国は、実習生をめぐる問題を根本的に見直さないと、海外の実習生から見放されることとなり、人手不足の業種は今後、立ちゆかなくなる可能性があることを意識すべきだと思う。」

また、技能実習制度の問題に詳しい東京大学の高谷幸准教授は、技能実習生の妊娠・出産をめぐる現状について、次のようにコメントを出しています。「(外国人技能実習制度は)外国人労働者を受け入れる制度ではなく国際貢献の制度となっているため、技能実習生は職場で問題が起きたとしても、自分で他の仕事を探して辞めることは原則、認められておらず、雇用主や監理団体との関係ではどうしても弱い立場にある。
母国で借金をして実習に来ている人も多いので、何とか我慢しなければと思ってしまうのだろう。
(実習生は)働いているから日本への滞在が認められるし、住居も雇用主が準備する形で、妊娠・出産を含め働くこと以外の生活は想定されていない。
『技能実習生らしく暮らしてください』ということだが、日本社会全体として、働くことと子育てを切り離してはいないか。外国人だけの問題という捉え方ではなく、子どもを産み育てることをみんなで支える社会になっているか考えることも必要だ。」
更に同インタビューにおいて、最高裁判所の判決について、刑事裁判の経験が長い元裁判官の半田靖史弁護士は
「(前略)今回の判決が孤立出産の問題に及ぼす影響については、判決の理論や結論だけで見ると必ずしも影響は大きくないと思うが、技能実習生が不安におびえて孤立出産してしまうことを防ぐ社会的なムーブメントを起こすきっかけになるのではないか」と話しています。

制度の見直しに向けて、政府は有識者会議を設置し、制度の存廃や再編も含めて議論を進めていて、秋頃をめどに最終報告書を提出する予定。
この報告書が前述の社会的な大きなムーブメントのきっかけの一つになりそうな予感がするところです。
注1:入管並びに外国人技能実習機構(以後、「機構」と称します。)から
「監理団体・実習実施者の皆様への大切なおしらせ」としてパンフレット「妊娠を理由に技能実習を一方的に終了することはできません」が公表されています。
URLは次の通りです;https://www.moj.go.jp/isa/content/001349019.pdf

2.妊娠~出産~育児について、実習生から相談を受けたらどうする?

実習生から相談を受けた場合、少なくとも下記の説明ができれば、初動の対応としては問題ないと考えます。
母子保健法の目的は、「妊産婦、乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ国民保健の向上に寄与すること」です。
日本に住む全ての女性が対象で、国籍に関係はありません。
妊産婦に限って言えば、妊婦に対する健康診断は妊娠初期から出産まで全14回実施され、健診項目(肝炎、HIV、梅毒、風疹ウイルス、血糖検査など)も決まっており、健診に係る費用の全額を、市町村が負担することになっています。
妊娠したら、先ずは居住先の市区町村の窓口にて「母子手帳」の交付申請からスタート、以後、産婦人科医の主治医の診察や指導に従うことになります。

3.日本は本当に消滅するのか?イーロン・マスク氏が警告した人口減少問題

2022年5月7日、米国テスラCEOのイーロン・マスク氏のTwitterでの発信内容は「(邦訳のみ)当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回らない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう。これは世界にとって大きな損失になる。」というものでした。
人口維持に必要な出生率は2.08と言われています。2021年の確定値は程遠く1.30でした。
日本の出生率が人口維持に必要な2.08に達しない限り、日本の人口は減少の一歩を辿ることになります。
イーロン・マスク氏の「いずれ存在しなくなるだろう」と述べるのは極論に見えますが、死亡数が出生数を上回る状態が続けば、イーロン・マスク氏の予言に真実味が帯びてくることは言うまでもありません。
日本国内に限れば、人口減少に伴って、物・サービスに対する需要が減り、売上が低下し、経済が停滞することに繋がります。そして、経済の停滞により給与所得者の平均年収の低下に繋がり、法人及び個人からの税収も減少します。税収が減少すれば、社会保障に回す財源不足に陥り、岸田内閣が唱える「異次元の少子化対策」は実現が難しくなることが予想されます(日本の労働力人口の減少に歯止が掛からないということです)。


4.我々関係者が取るべき方策

死亡数と出生数はそれぞれ記録を更新しています。
2022年の出生数は、戦後初の80万人割れとなりました。
婚姻数は2021年より少し回復したとは言え、低水準のままです。
視覚的に捉えても将来の人口減少は避けられそうにありません。

即ち、労働力人口はこれから益々減少することになります。
これが日本の実態です。我々日本人はこの実態から目をそらすことはできません。
一方、お隣の韓国は更に厳しい状況にあります。2022年の合計特殊出生率は0.78を記録しました。
韓国の少子化には歯止めがかかっていません。この問題の打開策の一つとして、実際、韓国政府は外国人労働者受け入れを視野に「出入国・移民管理庁(仮称)」の設立を検討中とのことです。

前述の監理団体関係者の談話(実習生のなかには、若い世代を中心に、韓国などより賃金の高い国を希望する人も増えていて)がより現実味を帯びることになります。
このような状況下において、我々外国人技能実習制度に係わる人間としては、「実習生にとって、日本は、安心して妊娠、育児ができる社会であり、かつ安心して働ける場所であることを心から実感して貰えるようにすること」、「実習生が一旦母国に帰っても再度来日し、特定技能労働者更には定住者として、日本で働いて貰えるようにすること」を目指して、官民一体となり「外国人労働者の働く環境を整える」ことが肝要だと考えます。

また実習生に一人でも多くの日本ファンを作り、彼らが母国に帰ったとき、「働きやすい日本」を大いに宣伝して貰い、次世代の実習生の応募者・候補者に繋げることが重要だと考えます。
技能実習の妊娠に関するQ&A(下記URL参照)が機構より公表されていますので、ご参考の上、ご対応頂ければ幸甚です。 https://www.otit.go.jp/files/user/210514-12.pdf

【発行元】

技能実習適正化支援センター http://www.titsc.org/
(Technical Intern Training Support Center)

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