技能実習生の解雇について「技能実習適正化支援センター」より



技能実習適正化支援センターさんニュースレターより転載。

技能実習適正化支援センターさんは正しい技能実習生の受け入れを促進するために活躍されている団体です。

技能実習生の解雇について語っております。参考になるはずですので、是非最後までお読みください。

参照元サイト:http://www.titsc.org/

 

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■ 1.日本の裁判所は労働者保護の立場から、解雇に非常に厳しい!! ■
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実習生に対する法的保護講習において、実習生にどの様に説明するのが良いか悩む部分があります。
雇用条件書「Ⅷ 退職に関する事項」の記載内容についてです。
日本の裁判所は労働者保護の立場から、労働者の解雇については使用者側に厳しい判断を下します。
そのため、会社は労働者(実習生)を簡単に解雇できない現状があります。

外国人技能実習制度で実習生を受け入れる際の手続き書類に「技能実習のための雇用契約書」があり、その別添書類に「雇用条件書」があります。
その雇用条件書「Ⅷ 退職に関する事項」に次の通り、記載されています。

1 自己都合退職の手続き(退職する_週間以上前に社長・工場長に届けること)
2 解雇の事由及び手続き
解雇は、やむを得ない事由がある場合にかぎり少なくとも30日前に予告をするか、又は30日分以上の平均賃金を支払って解雇する。
技能実習生の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、所轄労働基準監督署長の認定を受けることにより予告も平均賃金の支払も行わず即時解雇されることもあります。

この雇用条件書「Ⅷ 退職に関する事項2 解雇の事由及び手続き」を読んで、皆さんはどの様に解釈しますか。
さらっと読むと、就業規則の解雇事由に該当する様な「やむを得ない事由」があれば、実習実施者は、実習生を解雇できると理解されるのではないでしょうか。
実習生との雇用契約は、1年ごとに更改され3年間、若しくは最長5年間まで契約される有期契約です。
この有期契約における「雇用の終了」即ち「解雇」については、民法及び労働契約法に次の通り、定められています。

(1) 民法第628条「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

(2) 民法の特別法である労働契約法は第17条にて
「使用者は期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、
その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することが出来ない。」と定めています。
民法の規定「やむを得ない事由があるときは」より更に突っ込んで「やむを得ない事由がある場合でなければ」解雇できないと簡単には解雇はできない様に制限を掛けています。

(3) 上記の(2)について、厚生労働省の通達では、
「労働契約法第17条第1項『やむを得ない事由』があるか否かは、
個別具体的な事案に応じて判断されるものであるが、
契約期間は労働者及び使用者が合意によって決定したものであり、遵守されるものであることから、
『やむを得ない事由』があると認められる場合は、解雇権濫用法理における『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当』であると認められる場合よりも狭いと解されるものである。」とされており、「一般的に言えば、当該契約期間は雇用するという約束にもかかわらず、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させなければならないような特別の重大な事由ということとなる。」(菅野和夫『労働法第十版』234頁)というのが通説です。

そして、上記の(1)~(3)から次のことが導き出されています;

① 実習生は契約期間中の退職禁止(実習生の都合で勝手に退職はできません)
② 実習実施者は契約期間中の解雇禁止(実習生の横領・窃盗等重大な非違行為や重篤な病気によって仕事が続けることが難しくなった等「特別の重大な事由」がなければ、解雇できません)
③ 双方とも、「やむを得ない事由」があるときにのみ「直ちに契約の解除」をなしうるにとどまります。
④ しかも、その事由が一方の過失によって生じたときは、相手方に対し、損害賠償の責任を負うことになります。
損害賠償責任を負うことは労働者(実習生)も使用者(実習実施者)も同じ立場にあります。

裁判所は労働者保護の観点で解雇を判断しますので、日本人労働者と同様に、
実習生に対する解雇も労働者保護の観点で厳しく判断します。
更に、就業規則の周知の問題もあります。

就業規則については、①就業規則を作成して、➁労働者(外国人技能実習生等を含む)に周知して、③過半数従業員代表者の意見書を添付して①の就業規則と共に所轄労基署に届出して初めて、法的効力を有するとされています。
この「周知」に関連した裁判例(富山地裁平成25年7月17日判決)があります。
原告は実習生でした。
判決は「本件懲戒解雇当時、被告会社は、労働者に対して就業規則を周知していないから、本件懲戒解雇は、懲戒解雇事由の存在について判断するまでもなく無効である。」
とあっさり解雇が無効になった事例です。

日本人労働者に対して就業規則を周知させるということは簡単ではありません。
ましてや実習生をやです。この事件は原告が外国人技能実習生であり、当該実習実施者の就業規則が実習生に理解できる様に母国語に翻訳されていなかった様です。
仮に母国語に翻訳されていたとしても実習生に「周知」させるとなると日本人従業員以上に難しいと思われます。
しかしながら、周知を怠ると就業規則には法的効力が発生しないので、この判決の様な結果になることを注意する必要があります。

また、昨年某企業で発生した事例に基づいて、上記の「解雇予告除外認定」の難しさについて説明します。
就業規則に定める懲戒解雇事由である「無断欠勤が24日以上に及んだとき」に該当したため、日本人従業員を懲戒解雇にしようとした事例です。
解雇予告除外認定に関する通達に「無断欠勤が24日以上に及んだとき」という事項があるため、所轄労基署に「解雇予告除外認定申請書」を提出すると、当然に、解雇予告除外認定が受けられると思われました。

しかし、所轄労基署の判断は、「会社側の解雇の意思表示が当該労働者に伝わるか否か」が認定の重要な判断基準になるとのことでした。
即ち、何らかの手段で会社側の解雇の意思表示が当該労働者に伝わることが明らかであれば解雇予告の除外を認定するが、そうでなければ認定できないというものでした。
後日、労働局に相談しましたが、所轄労基署と同じ見解でした。
この懲戒解雇事由である「無断欠勤が24日以上に及んだとき」を実習生の失踪事件に当てはめてみます。
失踪事件においては、そもそも実習実施者の解雇の意思表示が失踪した実習生に伝わらないので、事実上、解雇予告除外認定も取得できないということになります。

従いまして、「2 解雇の事由及び手続き」後段の記述内容も鵜呑みにすることはできないということになります。

 

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