実習実施機関(受入企業)と監理団体を守れ!受入企業の飛ばしは絶対に防げっ!

不正行為による入管の正義の鉄槌から少しでもダメージを軽くする方法

自分が所属している監理団体が不正行為を行わないよう厳しく戒めていく、また、受入企業で不正行為が行われないよう定期巡回、監査を行ない、実習生の残業、実習生の賃金について常に目を光らせておくことが第一です。

しかし、厳しくチェックしていても漏れがあったり、受入企業に嘘をつかれたら対策も何もありません。起こった事象に対して冷静に対処していきましょう。

私が経験した事例ですが、厄介なのが受入企業による「飛ばし」でした。

飛ばし行為とは、本来実習を行う実習実施機関以外の現場で労働することです。
技能実習生は入国前、在留カードの資格変更、期間更新、賃金その他について変更があった際、雇用契約及び労働条件通知書にサインし、企業と本人で原本を一部ずつ保管します。

労働条件通知書の中に実習実施機関名、実習場所が書かれています。
この場所以外では実習をしてはいけないのです。〇〇㈱〇〇工場と書かれているのに、同社の○△工場で実習を行うことはできません。同社の他工場であれば労働条件通知書に場所を記載すれば、実習は可能です。しかし、職種、実習する職種にマッチした機械、器具が揃っているか、技能実習指導員が在籍しているかなどの基本的な事項もきちんと把握しておくこと。

また契約を結んだ後でも「実習場所の追加」の手続きを行えば可能になります。
同社他工場ならまだマシです。子会社、関連企業にて実習をさせるのは飛ばし行為となります。
私が遭遇したのはこのケースです。




関連会社へ飛ばしっ!

中国人実習生6名を受け入れていたK社。すべての加工ミスを実習生に押し付けたり、勤務時間を変更しても監理団体に通知しない。賃金計算ミスがよくあったので巡回、監査の時は特に気をつけていました。夜勤も勝手にさせているし…すぐに実習時間の変更届を書かせました。

巡回を行った時のこと、実習生3名が昼勤で出社していたため、インタビュー。
それが終わってから夜勤者がいる宿舎に向かいました。夜勤者は3名のはずでした。部屋にいたのは2名。

「あれ?Cさんはどこに行ったの?今日は休み?」

「Cさんは今日休みじゃない。〇〇市に行って仕事しています」

「〇〇市?随分遠いじゃないか?」

〇〇市で仕事…?^^;
これは匂う…どころか不正行為臭がプンプンします。この企業は家族経営で従業員規模15名未満の零細企業。この時は飛ばしよりも実習生のアルバイトを疑いました。が、実習生達の話を聞いていると、どうやらアルバイトではないことがわかりました。

「今週はCさんが〇〇市で仕事する番だから。今日はCさん出社だよ」

K社の専務が代表取締役社長を務めるS社で働いていたのです。
もちろん、S社は実習実施場所ではありませんし、そもそもこの企業には実習生を受け入れる資格すらありません。
身内が社長を務めているところが忙しいので、使い勝手の良い実習生を向かわせていたのでした。

この事実をすぐに企業に確認。

あっさり認めました。

現在行っている実習生をK社以外で実習させることは飛ばし行為であること。不正行為となって受け入れ停止の可能性が高く、御社や当団体だけでなく、当団体傘下の受入企業まで悪影響が出るかもしれないことを伝えました。
専務はすぐに非を認めて謝罪。「今後は絶対に飛ばしはしない」とおっしゃったので、入管への報告は見合わせました。
ただ、当団体から企業へ文書にて警告はしておきました。もし、入管からチェックが入った場合、管理団体から何の指導もしていないと責められてしまうため、きちっと書面で指導しておきましょう。

そして、1週間後。
K社の実習生が軽微な労災事故に遭いました。私はその時病院引率を依頼されましたが、都合が合わずに派遣機関の駐在員に行ってもらいました。その他の実習生と面談したところ、どうやらまだ実習生をS社で働かせているようなので、その日から2週間後に企業を抜き打ち訪問。

「ついでがあったので立ち寄っちゃいましたあ~」

飛ばしが行われる前も時折立ち寄っていたので、特に違和感を与えることはありませんでした。
と、その前に実習生宿舎を訪問しておきました。案の定実習生はS社に出向していました。しかも2名!全然懲りていない!前回実習生と話した時は、彼らの行為は飛ばしであり不正行為であることは伝えませんでしたが、今回はきっちりと伝えました。

「もし、今後、会社が君たちをS社に行くよう指示があったら私に言うように」

まあ、監理団体の職員などよりも企業の人間の方が怖いですから、私にチクることはほぼありませんでしょうけど。その足で企業を訪問。

実習生2名が不在だったことを専務に告げ、タイムカード等をチェック。
案の定、S社で働いていた日はタイムカードに打刻されておらず、証拠をなくそうとしたのでしょうか?S社でタイムカードを押したとのことですが…後日実習生に聞いたらS社の時はタイムカードを押していないとのことでした^^;
色々聞いてみると、飛ばしは2ヶ月前から始めていたとか。

不正行為であることを再度専務に伝え、この事実は入管へ報告する旨を伝えたら専務と社長がブチ切れ!

「飛ばし行為が不正行為であることは聞いたことがない!」
「関連企業なんだから構わないだろうが!」

「飛ばしが不正行為なんて聞いていない」の一点張り。受け入れ前にも不正行為についてさんざん説明したし、書面でも通知しただろう。っていうか前回の巡回で警告しただろうが…。
DQN企業であることはわかっていましたが、開き直ると余計DQN度がアップ。

極めつけの一言は、

「あんた達(監理団体)にこの事実(S社での勤務)を伝えたら困るのはあんたらだろ!あんたらに迷惑かけないように、心配させたくないから黙っていたんだよ!これはウチの配慮なんだよっ!」




DQN企業の配慮!

これを聞いた時は思わず笑ってしまいそうになりましたわい…。
が、笑っている場合ではないので飛ばしは不正行為で、バレたら受け入れ停止であることを再々度説明。その度に声を荒げていましたが、そんなことはお構いなしに淡々と説明。絶対にやるなと伝えてその日は引き上げました。

Landscape

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文書で再びK社に指導。
それと同時に指導した文書を入管へも転送。目下飛ばし行為が行われており、当団体としてもできうる限り改善指導を行った…と報告しました。

数日後、入管の担当官へ連絡し、

「今回、法改正後に初めて企業の不正行為を報告したけど…ぶっちゃけ速攻で受け入れ停止とか処分ってあるんですかね…?」

と思い切って聞いてみました。
担当官曰く、事案にもよるが、報告をしたからといってすぐに処分をしたり、抜き打ちで監査を行うことは無いとのことでした。ただ、今回の件については初期段階だし、監理団体がすぐに動いているので、いきなりK社をざっくり処分することはなかったのでしょう。引き続き厳しく指導していただき、もし、再び飛ばし行為が行われた際はすぐに報告して欲しいと言われました。

踊る大捜査線のセリフで「事件に大きいも小さいもない」と言われていますが、不正行為の報告が遅れたり、報告した事案があまりにも極端なものだったら…即時入管の精鋭たちが受入企業に乗り込むことも考えられます。

不正行為は厳しくチェック!

起こってしまったことは仕方がないので、いかに企業を指導するかが肝心です。

っていうか…すぐに入管に報告です。

ポイント

  1. 違反を見つけたら入管へ報告
  2. 口頭で直接注意する。取締役クラスに伝えること
  3. 書面で指導する

早めに入国管理局へ報告しましょう!それが結果的には監理団体のためにも企業のためにもなるのです!

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