女性の中国人実習生が失踪…っ！からの再会！～閑話休題～

もう随分前。数年前になるなあ。
研修生制度末期の頃でした。研修生制度から実習生制度への移行期間でした。研修から技能実習１号に切り替える世代の子たちがいました。

職種は『電子機器組立』。
この企業さんはリーマンショックを何とかしのぎきったものの、派遣社員、社員と解雇が続き、ついに技能実習生まで解雇せざる負えない状況になっていました。彼女たちが配属してから２年経つか経たないかの頃でしたね。

そんな中、ある中国人実習生（当時２２歳。仮名：王さんとしましょう）が失踪しました。
企業が解雇を決め、申し訳ない気持ちを含めて、彼女たちには手厚い解雇金を配布してくださいました。その解雇金を受け取った翌日失踪。

企業は「正直裏切られた気がした・・・」と言っていました。
しかし、王さんの仕事ぶりは良く、評価も高い、日本語もうまくは無いけれども積極的に話すタイプでした。

王さんからのラブコールを受けていた

王さんは来日前も来日後も日本語の学習を頑張っており、もっと宿題を出してほしいとよくせがまれていました。日本語検定も３級を取得し、失踪する前までは２級の受験勉強をしていました。
頭の回転が早い子で、仕事の覚えも早くコミュニケーション能力も高かったです。私とはほとんど中国語で話していましたが、

「才谷さんは日本語で話して、私は中国語で話す。そうすればお互いに勉強になるでしょう！」

とよく言われていました。
リーダー的な存在ではありませんでしたが、彼女に期待していました。物怖じせずに話すし、日本での生活も楽しんでいました。特別扱いはしませんでしたが、彼女から電話が来たり、巡回の折には色々と私に話しかけていたので応対していました。悩みの相談に乗ったりもしました。

「出国前に彼氏と分かれてきたけど、帰国したら親の紹介してくれる男性と見合いをしなければならない…」など。

私は日本人だけれど中国語が話せるので相談してきたのだなと思っていましたが、

• 巡回が終わってから買い物（重い商品を買うので男手が必要）に付き合ってほしい。
• お礼に食事がしたい。

と、接しているうちにどうやら彼女は私に気があるように感じました。
私は中国に駐在していたこともあり、中国人女性との恋愛は無きにしもあらず程度ですが、やはり彼女とは育った環境、国情により価値観が違いすぎるし、異国で寂しい思いをしている時に、母国語の話せる日本人男性、それも結婚適齢期の男だったら、一時的に心が揺らぐこともあるでしょう。

普通に巡回をし、王さんとの会話もありきたりのものにして深く接するのは避けました。ところが、寂しい、会いたいなどのメールが頻繁に来るようになりました。彼女の同僚の実習生たちは、彼女と私のことを冷やかしたこともありましたが、彼女が真剣になるに連れて、周囲の実習生たちは沈黙。

もちろん、私は彼女に指一本触れていません。

メールの返信も一度しかしていませんし、何度かメールが来ましたがすべて無視しました。その頃は、会社も残業がほとんどなくなり、派遣社員、社員の解雇が続いていました。

それから少しして実習生たちの解雇が決定。
で、王さんだけが失踪しました。

奇跡の再会っ！お腹もぽっこりっ！

それから２年ほどが経ちましたかね。その企業さんとはそれ以降お付き合いがなくなり、私が別件で関西地方にある企業を巡回していた時でした。冬でしたし、大好きなたい焼きが恋しいなと思っていたら、ちょうどたい焼きのお店がありました。
白あんにしようか、こしあんにしようか、つぶあんに…と、店のウィンドウをジロジロ見ながらお店に接近。

「才谷さんっ！！！？？」

「え？」

見ると見覚えのある顔が…っ！？

なんとあの時失踪した王さんでしたっ！めちゃくちゃきれいになっていて、実習生の頃の芋っぽさが全くなくなっており、洗練された女性になっていました。バンダナを締めて、エプロンをつけて様になっていました。エプロンを見ると、お腹が大きくなっていました。

「久しぶり！王ですよ！」

妊娠しており、日本人男性と結婚したとのこと。
水商売系の仕事をしたけど、すぐにお客さんと親しくなり、そのお客さんが旦那さんだとか。まさか２０歳も年上の男と結婚していないよな…？と心配になったので聞いてみると、

「私よりも８歳年上だよ！心配してくれたの？ありがとっ！」

と、日本語もとてもうまくなっていました。
中国語でも話しましたが、「才谷さんの中国語、まだ下手になって無いね！よかった！」と言われました…。

配偶者ビザを取得したので、不法滞在者ではありません。もう入管に報告する必要も無いでしょう（笑。旦那さんは会社員で、たいやき屋さんはただのアルバイトとのことでした。アルバイトして家族に仕送りをしているとのこと。

ああ～懐かしいなあ。

失踪したけど（失踪はあかんっ！）、日本の社会に溶け込み日本語も達者になっていました。彼女は今では二児の母親です。日本に住んでいるし、旦那さんとも上手く行っているようです。

以上…閑話休題でした。